「申し送り」は必要ない?申し送り廃止で見えた現場のリアル

仕事
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私の勤務する病棟では、ついに「個人の申し送り」が廃止になりました。

最初は「え、大丈夫?」と不安もありましたが、運用してみると、思った以上にメリットがあることに気づきました。

今回は、「個人間の申し送り」をやめたことで現場にどんな変化があったのか、メリットと課題の両方の視点から、リアルな感想をまとめてみたいと思います。


申し送りをやめた背景とは?

  • 「申し送り」に時間が取られ、患者さんへのケア開始が遅くなる
  • 働き方改革で業務の無駄を見直す流れが強まった
  • 必要のない情報をダラダラと申し送っている看護師がいたり、個人差が大きい

こうした背景から、「個人間の申し送り」をなくし、必要な情報はカルテ記録で共有するというスタイルに変わってきました。


申し送りがなくなって、どういう仕組みになった?

「個人間の申し送り」が廃止されたことで、すべての情報は電子カルテや記録に集約され、そこを確認することで引き継ぎが行われる仕組みに変わりました。

基本的には、夜勤・日勤の交代時に「申し送りの時間」は設けず、スタッフそれぞれが自分のタイミングで必要な情報を確認するスタイルです。

必要があればその場で、前担当者に口頭で補足を求めることも可能ですが、あくまで記録がすべてのベースという前提で運用されています。

なお、点滴ファイルだけは手渡しで引き継ぎを行っています。手渡すことで、投与時刻や指示内容の認識違いを防ぐためです。

他病棟では、点滴ファイルも直接渡さず、指定の場所にまとめて置いておき、次の勤務者がそこから自分の担当患者分をピックアップする、という方法で運用しているケースもあります。現場によって工夫の仕方はさまざまですが、「情報の取りこぼしをどう防ぐか」が共通の課題です。


メリット:思った以上に「楽」「安心」だった

◎ 時間短縮

申し送りがなくなったことで、交代時の勤務室の混雑やバタつきが減りました。

  • 患者さんのベッドサイドで業務中なのに、「申し送りの時間だからナースステーションに戻らなくちゃ」という手間がない
  • 申し送りを待たずに、自分のペースで患者さんのもとへ行って業務が開始できる
  • 例えば、育児短縮などで30分遅い出勤など、変則勤務を利用しているスタッフを待つ時間が削減

◎ 情報の均一化、正確性

申し送りがないので、基本的にはカルテからの情報収集になります。口頭での申し送りの内容に個人差が出ないぶん、記録をもとに誰もが同じ情報にアクセスできます。

「◯◯さんの申し送りが分かりやすい/分かりにくい」といったバラつきも気にならなくなりました。

◎ 疲れていても助かる

夜勤明けや勤務終わりのヘトヘトな時に、長時間の申し送りをする負担がなくなり、気持ちの面でも少し余裕が持てるようになりました。

◎ 精神的な負担の軽減

特に若手スタッフにとっては、怖い先輩に申し送る際に意地悪なツッコミを受けたり、細かく詰められたりするプレッシャーがありました。

申し送りがなくなったことで、そうした精神的な負担が軽くなり、安心して業務に集中できるようになったという声もあります。


デメリット:情報の取りこぼしが怖い

△ 医療指示以外の情報が抜けやすい

「点滴や内服」など医療行為の指示や、「発熱・痛み」など患者さんの全身状態はカルテから情報が得られるのですが、たとえば患者さんからの小さな希望や要望など、カルテに記載する事柄ではない情報を伝達するタイミングがない。

例)「◯時にシャワー浴びたいから、点滴の保護して」「◯時間ごとにアイスノンを交換してほしい」などなど

△ 不安なときに聞ける“場”が減る

特に新人や若手スタッフにとっては、先輩との申し送りが、学び確認の時間でもありました。
それがなくなったことで「誰に何を聞けばいいか分からない」と感じることもあります。

△ 情報収集のための前残業が発生

申し送りがない分、前勤務担当者から口頭で情報が聞けないため、すべてカルテから読み取る必要があります。その結果、以前より早く出勤してカルテを確認するスタッフもいます。


対策:申し送りがない体制での工夫

申し送り廃止に伴うデメリットはあるものの、やはりメリットの方が大きい。だからと言って、患者さんの不利益になりうるデメリットを放置はできません。そこで、私はこんな対策をとっています。

  • カルテ情報を以前よりも丁寧に読み込む

  • どうしても口頭で確認したいことは、前担当者に声をかけて直接確認する。申し送りがないからといって、遠慮せず補い合うことが大切です。

  • 自分の次の勤務者が情報を拾いやすいように、記録すべきことはタイムラグなしに即記録する。まずは箇条書きでもOK。たとえば「創部痛の訴えあり、指示簿に従いロキソニン内服」など、要点だけでも記録に残すことで連携ミスを防げます。

  • 勤務開始後、前の担当者がまだ勤務室に残っている間に、まず重症者やドレーン挿入中の患者さんのラウンドをする。異常や確認事項があっても、前担当者にその場で確認できます。情報の受け取り手である自分が主体的に動いています。

わたしの感想とまとめ

個人的には、「申し送り、なくてもOK! 少しだけど時間短縮につながるし、安全面も意外と問題なかった。」というのが率直な感想です。チーム全体の業務効率もUPしたと感じます。

実際、申し送りが廃止されたことに起因するインシデントは、現時点では発生していません。
「なくてもまわせる」「効率が上がる」だけでなく、「思っていたより安全性に影響しない」という結果は予想外でした。

ただし、「カルテの記録を正しく読む前提」や「必要があれば声をかける前提」があってこそ成り立つ仕組みだとも思います。

「あの時これを伝えておけば…」というヒヤリの芽が生まれないよう、今後も記録や声かけの工夫を積み重ねていきたいと思います。

現在、申し送り制度を見直したり、廃止を検討している病棟や病院があれば、一度試してみる価値はあります。

病院の形態や種別、看護体制やによって向き不向きはあると思いますが、良いところは取り入れ、残すべき部分は残す。トライアンドエラーを繰り返しながら、PDCAサイクルを回していくことで、現場に合った形が見えてくるはずです。

あなたの職場が今より少しでも働きやすい環境になりますように。。。

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